アヒージョ好きのビーバー

世の中の本質を、自分なりに考え、解説します。正義感が強く、偉そうなもの、金持ちには、牙を剥きます。

黄昏の車内風景5

ずいぶん寒い。

しかしながら、朝、汗びっしょりになる程寒さを食い止めてくれていた、モンベルの登山用ストリームパーカーは、秀逸である。頼もしい。暖かい。

しかし、身体を締め付けるようにできているので、少々腹周りが窮屈だ。

 

いつもの、最後尾に乗り、空いた席に収まった。しかし、急激な温度変化は、アレルギー性の咳を、ぶり返させる。咳が連発する。なすすべがない。この時とばかり、のど飴も用意していたのだが、この身体を締め付けているので、ポケットの下まで届かない。となりで、難しそうな本を熟読している男性に申し訳ない。そこで、カバンの中に、非常災害用として今朝方から備蓄していた、伊右衛門のペットボトルを取り出し、蓋を回した。飲みながら咳をしてはいけないと、恐る恐る一口、お茶を口に含んだ。飲み込むまで心配ではあったが、それを2、3回続けていると、咳はおさまった。

 

次の駅で、扉側の、端の席に座っていたとなりの男性が降りたので、席を端に詰めた。4人席なので、まだ中に2人座れる。すると、入れ替わりに、薄いピンク色のロングドレスの女性が、乗り込んできて扉付近に立ち、肩にかけていたハンドバッグ状のものを、ブルンと振り回し、扉へと体の向きを変えた。あと、1センチほどで、頭を直撃されるところであった。もしそうなれば、おそらく、こちらが痴漢をしたような調子で、捲し立てられるのであろう。

 

しかし、危機は続く。

その、ピンク色のロングコートの女性は、グイグイとお尻を座席の手すりに押し付けてくる。そのままではもう、肩が当たってしまうので、身体を左へと傾け、不自然な姿勢をとる。そうこうしているうちに、1人の男性が、隣の隣に座り、わずかに空いていた、わたしの隣の隙間を、30代半ばの背の高い女性が、「ごめんやっしゃ、おくれやっシャー」と、あの吉本ののりのようなタイミングで、グイグイと割り込んできた。

こちらはもう、なすがままである。出来るだけ、右に寄りたいが、そうはさせぬとピンク色のロングコートの臀部が行く手を阻む。もう、こうなれば、自分が縮むしかない。

出来るだけ、腰を前にずらし、阪神電車のちょいがけシートのような座り方で、肩の位置をずらすことにした。

こうなると、とても息苦しい。ああ、呼吸困難で死んでしまう。アヒージョ食べたかった。と思い始めた時、その、ピンク色のロングコートの女性が、姿勢を変えた。手すりから体が離れたので、この時とばかり、深く腰掛けた。やれやれである。 

 

この姿勢のまま、降車駅まで、我慢は続いたのである。でも、座れて幸せであります。