愛犬りょう 22
りょうは14歳の老柴犬。
滋賀県生まれ。おじいちゃんは、チャンピオン犬である。目が見えなくなって2年目。近くの獣医は、目も耳も聞こえないというが、密かに聞いているのを知っている。門のカチャンと扉の取っ手が回る音を聞きつけると新築の犬小屋からよたよたと出てくる。
高齢の柴犬の特徴として、腰が弱くなり歩行が困難になってくる。後ろ足を、引きずって歩いている感じ。
ある毎晩、鳴くことはなくなってきた。
原因がわかってきたからである。
3つもあった。
まず、お腹が空いた時である。食べるものは小屋の前に並べている2つのボウルの1つに、りょうの好きな、ドッグフードを、もう1つのボウルに母お手製の犬飯が入っているが、足らない時に、グズグズ言いながら、あちこち探しまくり、最後には、大きな声で甘えた声を出す。猫かオットセイのような声である。
これは、ボウルにドッグフードを入れてやると落ち着く。
次に、同じく、2つあるステンレス製の水入れに、水がない時。水を探して、庭や駐車場を歩き回り、しかもそんなことをしながら、植木鉢やプランターをこかしまくり、そこらじゅうをめっちゃくちゃにしながら、グズグズ鳴く。こんちくしょうと、いわんばかりのご立腹で、世の中を諦めきった声を上げる。この前までいたスッポンの水槽の水を飲むまで半狂乱である。
水入れに水を入れてやっても、なかなか納得しない時があるが、鼻を濡らしてやり、しばらく水に近づけてやると、落ち着いてくる。納得いかなくても、それ以上はグズグズ言わない。
最後に、自転車のスポークや、植木の紐や支柱に足を取られ、身動きが取れない時。この時は、流石に命の危険を感じるらしく、オットセイのような声をあげて絶叫する。時には、車の下で、また、隣との境目の隙間で、大変な姿で横たわっていることが多い。
足が引っかからないようにし、通路には、植木鉢を置かないようにした。しかし、こればかりは、りょうの気持ち次第。運次第である。大嫌いだった雨の日も、びしょ濡れになりながら、ぶらぶらしている。認知症なのかもしれない。
とにかく、昼夜逆転しているからかもと、このように、朝と晩は町内を散歩することにした。