朝の車内から5
朝から喉が痛く、鼻が両方とも詰まっている。口でしか息ができないので、きっと大イビキをかいていたのであろう。いっそのこと休んでしまおうかと思ったが、昨日、まつげを抜いたりょうの目薬をしないとと、頑張って起きた。
立ち上がって2、3歩歩き始めたら、右腰に、グキッとくるものが。危ない、ギックリ腰か?しかし、実際ギックリ腰になったことはなく、何か凄く痛いので勝手にそう思ったに過ぎない。
しばらく、西郷どんのように立ち尽くし、痛みが消えるのをドキドキしながら待った。
2、3分したら痛みも消え、そうこうしているうちに、鼻もすっきりしてきた。
さすが、サピエンスである。直立には強い。
いつものように、エネファームのために、朝風呂に入り、髪の毛があまり乾かぬまま、通勤電車に向かった。
車内は、また満員。
こんなに混んでいても、学生は、背中のリュックを下ろそうとしない。そればかりか、若いサラリーマンも、たいがい、スマホをもち親指を立て、イヤホンを両耳にさして、外部との隔絶を図っている。
ストレスが何度も押し寄せる。口は臭くないか、加齢臭はしないかと、気にしながら乗っている。昔は、男の体臭はそういうものだ、という時代もあった。チャールズブロンソンなどは、「うーむ、マンダム」とかなんとか言って、男の匂いを売っていた。そういう頃からすれば、今は、無味無臭、氷の世界である。お互いに、関係性を断ち切り、自分の世界で生きる。朝の車中は、やはり、戦場に赴く戦士の集まりのようである。
氷の世界?
アフロヘアの兄さんが、「お元気ですか」と、声をかけてきそうな、時代はもう終わったのだ。
少し空いたので、やっといつもの立ち位置に立つことができた。そこでわたしは、一息つき、サピエンス全史を読み始めた。