伐採侍 庭の木編
庭にはもう17年にもなる木が生えている。家を建てた時に、植えてもらった木だが、名前は教えてもらえなかった。
近所の人は、南の木だという。たしかに柔らかい。成長も早い。カブトムシもセミも好きだ。グリーンアドバイザーなのに、木は全然わからない。
ただ、年に一度切らないと、大変なことになってしまうことは確実である。もう、そうなりそうなので、意を決して自分で切ることにした。
実は、2ヶ月も前から、いつも切ってもらっていた植木屋にお願いしていたのだが、待てど暮らせど連絡がない。どうしてか、でもこういうことは、この世界には多いらしい。約束しても、手間賃を釣り上げるとか、約束したことをしないとか、ネットでは、明朗会計や即日手配を謳いながら、実は、ちゃらんぽらんである。これなら、バカボンのパパにお願いしたほうがいい。
ということで、自分で切ることになった。仕方がなかったのであるが、近所のマダムの、松でもないのだから自分できればいいのにという、実に無責任な一言が、わたしの心に火をつけ、やりたくなかったことを、実行させたのだ。
家にはろくなノコギリがない。近くのホームセンターで、生木伐採用のノコギリを買ってきた。一応専門家なのでプロ仕様のを買った。高かった。新潟三条市の竹内栄治作である。脚立を立て、こわごわ登り、ガリガリ切り始めた。切れば楽しくなる。バサバサと枝を切り、下に落としていく。どういうわけか、愛犬のりょうが、脚立の下でウロウロしている。大変なことが始まったと、あのお祭りの気分で出てきたのかもしれないし、単なるやじ犬なのかもしれない。
伐採した枝や葉は、45リットルのゴミ袋7枚分になった。詰め込みには、母が手伝ってくれた。妻も子どもも、花や木については無関心であるし、趣味だと考えているところがある。りょうまで、手伝いに来てるというのに、なんてこったパンナコッタとぶつくさ言いながら、2時間かけて作業を終えた。
後片付けは、母が全部してくれていた。戦前生まれはすごい。働くことへのこだわりはハンパではない。
この勢いで、少し離れたところにある、母のモータープールの木も切りに行った。棘が生えているアカシヤである。日没終了で全部切れなかったから、年初めにまた挑戦する。疲れたけれど、木を切ると妙にさっぱりするものだ。