外に置いてきた、りょうの犬小屋が、ぐちゃぐちゃに壊れてきて、ついに床が抜けるようになった。
小屋の中で、お漏らしはしないのだが、結構臭いがして、朽ち果てた感じであった。案の定、入り口が壊れ、柱がぐらぐらし、震度4でも崩れ去りそうな代物になっていた。
そこで、プレハブ住宅でもいい。今までのような、全てが木でできている、あの張り倒し横綱白鵬が宣伝していた住友林業のようなものでなくてもいい。とにかく、ワンルームなのであるから、システムキッチン、ユニットバスでいいのである。隙間ができない小屋、綺麗に清掃できる小屋、あっという間に組み立てられる小屋をさがした。本音を言うと、最後のあっという間に組み立てられるというのが、1番の条件だ。
あった。組み立て時間、たったの10分。プラスチック製。モノコックボディ。しかも、天窓付き。役に立たないけれど、おしゃれ。子どもが言うには、りょうには、立派すぎるかも。
それでも、この厳しい冬を、ボロボロの小屋で過ごしてきたのだ。命がけで、この大寒波に立ち向かってきたのだ。ご飯をよこせ、水を用意しろと、夜中の3時でも、うわーん、うわーんと、泣き喚いてきたのだ。その努力に、そのご褒美に、家一軒ぐらいなんだ。りょうの、たった一度の人生だ。目の見えない、老犬のりょうが、懸命に生きてきたご褒美なのだ。
控えおろう。これにおわすどなたと心得おる、と言いながら、レジで、力強く、6番くださいなと言い、購入した。
組み立ては、チュートリアルに疎くなった自分ではなく、子どもに任せた。
電気マットと、母親が温めた湯たんぽを入れた。
りょうは幸せである。たぶん。