9 カミツキガメ
亀の仲間に、カミツキガメがいる。
なんでも近づいたら噛むという、
恐るべき根性の持ち主である。
歯のケアに得意な、シオノギやライオンが、会社の玄関ホールで飼っていそうな丈夫な歯である。
カミツキガメは、近頃自分で買えなくなったからという理由で、どんどん捨てられ、池や川に放流されている。
カミツキガメを飼って将来どうしようと思っていたのであろうか。
おかげさまで、池や川は、凶暴な亀や、アマゾンのアリゲーターガーなど、熱帯の怪しげな生き物の繁殖地になりつつある。
うっかり水に落ちれば、ピラニアにあっという間に骨にされてしまうかもしれない。川によって危険度が指定される日が来るかもしれない。
食べられると、いいのではあるが、風土病の心配もある。変な虫が出てくるかもしれない。
さて、うちのてんちゃんである。
てんちゃんは、正しくはてんてんというが、名付け親である子どもが言うには、うる星やつらの関西弁を操るてんちゃんになぞらえているらしい。捨て猫、はぐれ猫であるてんちゃんは、我が家に来た時は、ワイシャツのポケットに入るぐらい小さかった。今はずいぶん大きくなって来たが、まだまだ子どもである。
なんでも噛み付く。
手の爪でひっかくことはなくなって来たが、足首や手首を、こちらの油断の隙を狙って噛みにくる。執拗でなかなかやめないが、眠くなるとさっさと店じまいして、隣の椅子の上で寝たり、袋の中に隠れたりしていきなりオフになる。
学生時代に下宿で飼っていた子猫は、ずっとベタベタして来た。可愛かった。
てんちゃんは、少し違うなあという感じである。