もうすぐハロウィン。
何年か前から、クリスマスと人気が逆転しているらしいが、よくわからない。
学校によっては、ハロウィンの子どもの行動で、地域に注意事項を配り始めたところもあるらしい。外国の風習が日本に定着して行く様子を目の当たりにできるのは、なかなかの体験ではあるが、この行動の意味を考えると、経済の本質を間違って教育してしまわないかと心配になる。
何もしないで、お菓子をもらいにきましたという行事は日本にはあまりない。もちろん、何をしなくても、もらえるお年玉のようなものもあるが、それは知り合いとしてもらえるものであり、見知らぬ人からもらうのは難しい。
今はほとんどなくなりかけている昔からの行事の中に、日本人の教育観がまだ生きているものがある。
神戸の兵庫区、長田区といった、神戸港の発展のために尽くしてきた人々が住む地域は、一時大正時代を中心に、港湾労働者やそれに付随する仕事のために、人口が増加し、今でいうニュータウンが形成された。そのために、水田を埋めたて、長屋を作った。しかし、家屋は、水田ならではの湿気に悩まされ、肺炎やチフスで亡くなる子どもが多かったという。
長屋の角や、長屋の中に、地蔵菩薩を祭り、祠を作った。
その名残で、ものすごくたくさんの地蔵が今でもあり、地域の人たちが管理、世話をしている。子どもが生まれると、名前を書いた赤い提灯が祭られる。8月の23日と24日には、地蔵盆として、地蔵を清め、提灯や灯籠を灯してお祭りをする。
地域の人たちは、お菓子を備えるが、子どもたちは、それを8月23日の夜、地蔵にお参りをした時に、配ってもらえる。どこの地蔵尊をお参りしてもいいが、赤巻きといって太い線香に、火をつけて拝むことが条件である。すると、地域の人が、お菓子を持ってきた袋に入れてくれる。
お菓子だけではなく、スイカやジュースの時もある。スイカは持って帰られないから急いでその場でいただく。早く食べて次に行かないと、どこも同じ時間に始まっているから、別の地蔵尊のことが気になるからだ。どこからきたのかと、よく聞かれる。知らない子どもに、どこがどんな感じか、聞き合い情報交換をする。
大人も子どもも、笑顔の祭りである。
これを地蔵盆というが、全国どこでも残っている。しかし、少子化の影響で地蔵そのものが減少してきているという。
また、栃木県塩谷地区に伝わる「ぼうじぼ」は面白い。今年の豊作を祝い、来年の五穀豊穣を願って地面を叩くと、害虫が逃げ出して豊かな土になるという謂れがある。
子どもたちは、農家の縁側や玄関で、藁を束ねた藁鉄砲で地面を叩いて、「ぼうじぼ当たれ、三角四角にソバ当たれ!」と唄い、近隣を練り歩く。
「当たれ」とは「豊作であれ」であり、「三角四角にソバ当たれ!」は「土地の狭い畑でもソバがいっぱい実れ」ってことだ。
これは、十三夜と十五夜の、夜に行われる。
そして、こどもたちは家々で、お小遣いやお菓子をもらう。
藁鉄砲を叩いた対価である。
家の人も子どももどちらも楽しみにしている。たとえ、お月様が出ていなくてもこの行事はある。
このように、ものをもらうには、労働や信仰の対価がなくてはならない。
相手を驚かせてものをせしめるというのは、トランプのやり方でしかない。こんなところでも、しっかり見極めないといけない。