チキンラーメン60周年
今朝ドラは、チキンラーメンを発明した、安藤百福さんの妻を主人公にした話である。おそらく60周年に合わせたのだろう。
今、日清食品三兄弟の、「チキンラーメン」「日清焼きそば」「出前一丁」の五食パックには、盛んに60周年を謳っている。
チキンラーメンを左手に持ち、そうか、そんなに時間が経ったのか。と、しみじみと夕日を見上げ台所に立つとドラマのようだが、あいにく我が家は台所が東向きであり、勝手口から夕日が少しだけさしてくるのである。
チキンラーメンは、なかなか、CMのように卵が固まらない。当たり前である。たった2、3分で、しかも90度にも満たない温度で、タンパク質は固まらない。だから、卵スポットに生卵を落とし、お湯を注いで3分待っても、なるほどいい茹で具合だということにはならないで、わずかに生卵の一部が白く変色した程度のものとなる。だから卵を入れていいものか、それとも他で茹でようか、フライパンで目玉焼き風に仕上げようかと、迷ってしまうのである。シンプルだが、断然合うのはネギである。本来、平打ち麺でスープが絡みやすいのだが、あのツルツル感にネギのシャキシャキ感がたまらなくいい。
開発者の安藤百福さんは、「美味しく食べるコツはちゃんと蓋を閉めてきっちり3分待ち、よくかき混ぜてから食べること」ということばをのこしている。そうか即席とはいえ、どんなこともきちんと丁寧にやるのだ。そこも日本人好みで、外国人にもうけるかもしれない。
さて、チキンラーメンの麺に含まれるデンプン質は加熱によってアルファ化(糊化)されているため消化吸収上は問題なく、非常食としても大丈夫なのである。焼きそばとしても、おやつの乾麺としても食べられる万能即席麺である。
焼きそばは、ソースがいい。
たった220mlで麺に給水させ野菜や肉を温めていくのは、火力が中火ということを守りながら、テキパキとひっくり返し、かき混ぜに没頭しなければならない。1秒たりともフライパンから目を離してはならないのである。それでも、きちんと焼きそばの硬さが残るような仕上がりになることは少なく、パリパリに麺がフライパンにくっついてしまうか、野菜から出る水分や、またいちびって入れてしまったキノコから出る水分で、大抵ぐちゃぐちゃになるかである。昔CMでやっていたように、フライパンから麺を持ち上げてなんてパフォーマンスなどできないのである。焼きそばと言いながら、ラーメンの存在感は少ない。
それでも焼きそばをつくるのは、あのスパイシーなソースに会いたいからである。限定で、ソースだけ販売をしていた時もあったが、日常的に売ってくれないものかと思う。
他社から袋焼きそばが開発され、中にはいかにもソースと言わんばかりの液体ソースがついていたりするものもある中で、しかも日清の焼そばUFOもあるというのに、今だに、即席焼きそばの定番として位置付けられているのは実にえらい。
出前一丁は、東南アジアで評判がいい。特に香港では、出前一丁王国と言ってもいいぐらい、さまざまな味のものが出回っている。ごま油が香港の人の口にあったからだということだが、あれぐらいの量でいいのだろうかと思う。
CMの音楽は、浪速のモーツァルト、探偵ナイトスクープ最高顧問であるキダタローさんだ。
実に安易な製品名ではあるが、食べてみようかなあという気にさせる安直さがいい。
この前、久しぶりに食べたが、何がいいのか、やたら美味しい。麺、スープ、ラー油の相乗効果であろう。いつぞや世界史で習った三位一体説を思い出してしまった。
この三食が、日清の袋麺の主力商品である。時々、味に工夫を加えた、期間限定のような商品が出るが、いずれも素の朝座は大切にしている。
この度、復興版が出た。懐かしいのどうかもう昔のパッケージは覚えていないが、とにかく五食パックとして店頭に並んでいる。
しかし、残念なことに、中身は今のものである。60年前も同じ味だったのだろうか。