花火後編 みなとこうべ
いよいよ始まった。
まともに花火大会は、出かけたことはなかった。たくさんの人で大変だし、近くへ行けばいつでも見れると、舐めて考えていたのかもしれない。
東京湾大華火祭の時は、月島にいたのにもかかわらず、花火の音がする中、ひたすらもんじゃ焼きを食べていたし、去年の神宮外苑花火大会も、上智から見えていたので、ホテルに資料を置いてから駆けつけると、もう帰りの人でごった返していた。
今回は、自由席と言えども席がある。
側には、花火大好きの応援団もいて、なんだか、雰囲気に呑まれそうだ。
周りは、みんなベテランのようだ。
プログラムがある。
ただ単にバンバン打ち上げるのだと思っていたら、なにがしかのテーマがあり、それを打ち上げ花火で表現するという、実にロマンチックな物語がある。
ちなみに、今回は
「つながるキセキ」150年のありがとう
というメインテーマに
① オープニング
② まちを彩る「神戸夜景」
③ 山と海「つなぐ水」
④ 新しい風「生まれる文化」
⑤ 煌びやか「カーニバル」
⑥ 150年の「ありがとう」
の、6つのサブテーマがあり、それぞれの間に解説が放送される。
あの色はあれを表現しているのだとか、この形はおそらくこれを見立てているのだとか、勝手に想像するしかないのであるが、周りの観衆は、「オー」だとか「ワー」だとか、声に出して楽しんでいる。
そうなのか。そんなにすごいのか。と、驚き具合によって、これが人気の花火だとか、これはもう1つなんだと、評価の基準を覚えていく。
とにかく、音が大きく、打ち上げの台船が近くなので、花火が真上で見える。迫力満点。それだけでも、興奮する。
ふしぎなことに、そのサブテーマの終わりは、必ずみんな拍手をするのである。
もちろん綺麗な時は、隣の花火大好きの応援団は拍手をしたり感嘆の声を上げているのであるが、ひとくくりの枠がわかるらしく、盛んに拍手をしている。
それなのにわたしは、左手に大好きなプレミアムモルツを、右手にこれまた、なとりの 高級スルメを持ち、クチャクチャ噛みながら、ほうほうと言っているだけなのである。
周りはベテランの花火好きだらけ。だから、なんでもかんでも褒めたりはしない。でも、いいものは、思い切り褒める。
なんだか、クラシックのコンサートに似ている。
しかし、花火は、褒めても、すぐに消えてしまう。決してリクエストには応えてくれない。顔が見えているものの正体がつかめない。そう考えると、すごく難解な娯楽である。
今回は、150周年記念として、15000発尺玉150発を、打ち上げた。花火界として、それがどういう意味があるのか、どれほどすごいのかわからないが、いつもよりすごいらしい。
記念の花火をすぐ近くで見ることができて、うれしかった。 全てが終わった時、例のOLの1人が、最後泣きそうになったって言っていたのが印象的であった。
帰りは、ものすごく混んでいた。あれだけの人が、一気に駅に押し寄せるのだ。アナウンスで、消防音楽隊が演奏をしているので聞いてからゆっくり帰るよう言ってるのだが、なんのことかわからない。
たくさんの人が出ているのに、車を規制しない警察は、何なのだろう。大阪府警にさえ馬鹿にされる兵庫県警。おしゃれな街なのに、DJポリスもいない。
1番ダメなのは、車の渋滞に巻き込まれ、救急搬送中の救急車が2台も動けなかったことである。警官も見て見ぬ振りである。どいつもこいつも、言われたことしかできない馬鹿公務員がと、ものすごく腹が立った。そんな仕事ぶりでも、彼らには、危険手当が出ているのだ。
納涼どころか汗びっしょりになって帰路を急いだ。