愛犬りょう17
ついにりょうの年が始まった。
少し顔が腫れている。ずいぶん痩せてきた。
おなじみのりょうは、15歳、オスのしば犬である。血統書付き、おじいちゃんはチャンピオン犬。噛みつきが得意。気弱。打たれ弱い。すぐに鳴いて助けを求める。
去年から目が見えない。鼻がカサカサ。
立派なおじいちゃん。人間でいうと100歳。
ほとんど小屋の中に寝ていて、トイレのときだけ小屋から出てくる。今は寒いから、ひなたぼっこもしない。
このぐらい歳が行くと、少し認知症もあるようだが、もともとわからないから、本心を調べようがない。
歩き方も、しば犬の特徴で、高齢になると腰がぐにゃぐにゃするが、りょうもペタペタと、体を揺すって歩く。しかし、結構速い。
昨日の朝は、どういうわけか、庭の隅の凹んだところで、仰向けになって寝ていた。
発見した子どもは、死んだのではないかとびっくりしたらしい。
目は見えないから、食べ物も見えない。犬は、目で見てそれから鼻を効かせる。よほどの匂いがしていないと、食べ物があるかどうかわからない。
だから、母が作ったご飯中心のいわゆる犬飯も、匂いのしないものならそのままにしてしまい、母の激怒に会う。
こんな調子である。
ドックフードも、2種類用意しているが、2キロ3500円のと2キロ600円のものは、見事に見分けることができる。混ぜて食べさせないと、高い方しか食べない。
しかも、手のひらに乗せてやらないと食べなくなってきた。もう、シャボン玉ホリデーの、ザ、ピーナッツがやっていた、
「おとっつあん、おかゆができたわよ」「いつもすまないね、オレがこんな体でなければ」
「それは言わない約束でしょ」
「カァ~ット」
「およびでない、およびでない。こりゃまた失礼いたしました」
のようなものである。
わかることは、りょうはグルメである。
まあ、爺さんだから仕方がないし、介護しないといけない。まだ、自分でトイレをしてくれるからいいが、毎日ヒヤヒヤである。
近くの獣医さんは、りょうの緑内障は見抜けなかった。また、三年前にかかった病気は今 思うと、ジステンバかもしれないとまで言いだす始末。
わたしも、大したことはないと、家族としての配慮が足りなかった。もっと病気と向き合えばよかったのに、と悔やんでいる。だから、3500円の、ドックフードを買ってしまう。1ヶ月で1万円。りょうの辛さに比べると、安すぎるのではないかと思っている。