ゆずの知恵
我が家には、一本の柚の木がある。
高さは3メートル。
いつも1月に、高くなった幹と、裏の家に伸びようとする枝を切る。
4年前からやっている。
昨年は、400ほどの実をつけた。
元々は鉢植えの苗であった。
しかし、みかんなど鉢植えの木がたくさんになってきたので、日当たりはさほど良くないが、家の裏の畑になんとなく植え替えた。
というか、あまりにも実ができないので、もうどうでもいいやと、植えたのである。
すでに家族が勝手に植えた紫陽花の木と、わたしの南高梅の木があったが、それを邪魔しないよう、畑の端に植えた。
そして3年ほど経ち、近所の人が「柚ができている」と教えてくれた。裏の畑は、日当たりがイマイチなので、あまり手入れをしていなかった。
紫陽花も育ちにくく、南高梅に至っては、全然おおきくならず、梅の花も隣に蠟梅を植えたのにもかかわらず、実が2、3個できるだけで、最後は枯れてしまった。だから、ゆずには何も期待していなかった。
しかし、爆発的に大きくなり、みるみるうちに花を咲かせ、小さいながらたくさんの実をつけるようになったのである。
昨年はたくさんできた実を、職場にも家族の職場にもお裾分けをした。近所の人が、ゆず狩りにも来た。枝が混んできたので、枝の剪定もした。花がたくさん咲き、いよいよ実がつくようになった時、1センチほどの実が地面に落ちて、しかも、時間が経ったらしく黄色に変色していた。何百という小さな実が、地面にぶちまけたように大量に落ちていたのである。
調べてみると、それは、柚の木が自分の木の能力を測って見て、勝手に摘果しているのだという。例えば、付けた実について、水不足や肥料の与えられ方を見て、自分の判断で余分な実を落とすのだという。
だから、今年の柚子は、量が少なく、すこし危機的な状況である。よくみると、まだまだ色の良くない柚の赤ちゃんがあちらこちらにいる。
脳味噌はないかもしれないが、柚子の木は、植物として、なんとか命をつなぐために、今何をしなければならないかを決断しているのである。